「体の声を聴ける」ということ Topics

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微妙な体調の変化に気づく

 体調は、本当に微妙に、刻々と変化します。起きたとき、「よく寝たなあ」と感じる朝もあれば、「体が重いなあ」と感じる朝もあります。お通じの時も、「快調」な日と、「やや緩め」「カチカチ」の日があるはずです。昼ご飯をいつものカレー屋さんで食べても、感じる味は日々微妙に違うはずです。

 夕方6時、「ああ、疲れたー」の日もあれば、「少しなら残業もできるよ」の日もあるでしょう。かといって、その時間に、上司に何か注意されたりすると、さっきまでの勢いがシューッとしぼんで「ドッと疲れた、早く帰りたい」と思ったりします。このような、日々刻々と変化する微妙な体調の変化を感じ取れることが、健康の重要な要素です。

 なぜならば、「微妙な変化を感じられない人」は、「体調が下り坂のとき」に、「無理をして、体を疲弊させてしまう」可能性が非常に高いからです。家のたとえでいうと、「床のきしむ音に気づかない人は、そこに重い本棚を運び入れたりもしてしまう」という具合です。すると、どうなるでしょう?床が、抜けてしまいます。これが、病気の「発症」です。しかしその前には「床のきしみ」という、前兆があるはずなのです。

「症状を消すこと」と「治ること」の違い

 私たちは、病気にかかり、症状を感じるとき、つらいものですから、どうしても「早く治りたい」と思ってしまいます。これは、自然なことです。しかし「症状を消すこと」と「治ること」は、別物です。風邪を例にとりましょう。ウイルスが体内に入ります。抵抗力が「そのとき、落ちていた」から侵入を許したのです。

 喉の痛みや続く発熱は、体内の、白血球を中心とする「防御隊」とウイルスとの戦争の現れです。では、このときの正しい対処は?もちろん、防御隊に対する加勢です。彼らが働きやすく、できれば援軍が増えるような環境をつくってあげることです。これが睡眠なのです。ですから、風邪を引いたときは、いつもより早く眠くなり、睡眠中に大いに戦いが盛り上がり(熱が上がって)、早くのうちに終わり、早く元気になれるのです。

 しかし睡眠時間が短いと、戦いは中途半端になります。翌日も微熱が続き、夜になったらまた熱が上がって・・・といった小競り合いが続くことになるのです。下手をすれば味方はじりじりと退却を迫られ、体のより深いところでの戦いに持ち込まれてしまうのです。これが肺炎です。

 さて、風邪を引いたときに熱を下げる薬を使う人がいます。これはウイルスと防御隊の間の熱戦の最中に、双方に向けて水をかけるようなものです。うまく戦いがうやむやになるかもしれませんが、水が乾いたらもう一度戦いが始まる可能性も高いのです。ウイルスはまだ排除されずに残ったままだからです。

 防御隊は再度、勇を鼓して戦いを挑むことになります。結局は、戦いは続く可能性が高いのです。いやむしろ、終わりを引き延ばすことになるのです。「症状を消しにかかること」とは相容れない場合があることを知っておくことが大事です。

 症状は、「戦いが起こっているよ」「ここ、だいぶん傷んでいるよ」という警告です。そこでちゃんと歩みを止めて、「どれどれ、ああこれは大変だ、防御隊に加勢しないと」と思えるようになっておきましょう。これが「体の声を聴ける」ということなのです。

治療とは、体外から体内への物理的・化学的刺激

 治療とは多くの場合、体外から何らかの刺激を体内に加えることです(A)。薬にしろ、手術にしろ、鍼やマッサージにしろ、そう考えて差し支えないでしょう。それが体内で、物理的、化学的に反応します(B)。その結果、効果あるいは副反応がでます(C)。効果とは言わば、ボール(A)を床(B)に落としたときの跳ね返り(C)ということができます。

 薬(A)は同じでも、その受け手の状況(B)が百人百様なので、治療効果(C)は千差万別です。動物実験と実際の臨床効果は、程度も方向性も、バラつきの程度がはなはだしく異なります。ある薬について、人に投与して初めて、予期せぬ副作用が判明したりするのは、こういうことなのです。

 言い換えると、患者さんの体(B)を、「反応のよい状態、(実験)動物に近い状態に近づけていかないと、期待した効果がでない」ということになります。ですから、治療法(A)の選択もさることながら、同時並行で患者さんの体質(B)改善、すなわち「身体野生化」を進めていく必要があるのです。しかし現代医療は、なぜか、この点に対する配慮が決定的に不足しています。

 期待した効果が出ないとき、治療法(A)の選択を間違えたのか、患者さんの体内の状態(B)が悪いせいなのかは、どちらの可能性もあります。しかし患者さんの体(B)の改善を進めない限り、治療法(A)を次々変えていったところで、期待した効果(C)が得られる可能性は高まらないはずです。

 身体野生化とは、「治る体」にしていくことであり、「薬(治療)が効く体」にしていくことなのです。そのための、決定的に重要なポイントが「動物と人間の最大の違い」、すなわち「脳」なのです。

(「病気は脳がつくっていた 動物脳を解放すれば健康になる!」 田中 一 2015/7/14 現代書林より引用)