「揺らぎ」が生命の本質 Topics


 常日ごろ、交感神経と副交感神経は、それぞれ拮抗して働き、文字通りシーソーのように揺れながら、うまくバランスをとっているのだが、極端に一方に傾いたあとには、もう一方へ揺り戻す程度も大きくなる。一方からもう一方へ傾きが移ることから、これを自律神経の揺り戻しと呼ぶ。

 揺り戻しがなく傾きっぱなしのほうが、からだにとっては、むしろ危険なのである。二日酔のあとの下痢も、単にお腹を悪くしたというよりも、はじめに飲酒によって交感神経緊張が起こったために、あとになって副交感神経緊張へ移行した。すなわち、「揺り戻し」たわけである。このように揺れる現象は、日常生活の中ではしょっちゅう起こっているのである。

 マウスに薬剤を与えて交感神経緊張か副交感神経緊張の一方の状態を持続してつくろうとしても、大変むずかしい。こちらの都合で、一方の状態をつくりたいのだが、揺り戻しが激しく起こり、自律神経の働きが一定しない。このような揺らぎが生命の本質なのであろう。

 自律神経失調症とか、女性の更年期にみられる不定愁訴症候群という病気も、自律神経系の揺り戻しが絶え間なく起こって、極度に精神が不安定になっているものであろう。あるときは交感神経緊張がきたかと思うと、すぐに副交感神経緊張症状が現れたりする。

 患者にとってはつらい症状であろうが、からだはこの調節機構によって活力とバランスを保っているにちがいない。私は病気も一つの生体反応だと考えている。多くの病気においては(さほど重症でない場合の話だが)、ある身体状況に対して自律神経が揺り戻しを起こしながら症状が進行したり軽快したりしていく。

 だから、揺り戻しそのものはきわめて健全な働きにちがいない。むしろ自律神経の針が極端に片側へ振れて揺り戻しを許さない場合、生体防御機構は破綻し、症状が重くなるか後遺症が残るなどして、究極的には死が訪れるのではないかと思うのである。

(「病気になる体質を変える! 免疫健康学」安保 徹 2011.7.22 PHP文庫より引用)

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