「高齢者の入浴事故はどうして起こるのか?-特徴と対策ー」(サイト引用) Topics

入浴

「高齢者の入浴事故はどうして起こるのか?-特徴と対策ー」
(東京都健康長寿医療センター研究所 副所長 高橋 龍太郎)

http://www.tmghig.jp/J_TMIG/topics/topics_184.html#first_box

(以下、抜粋引用)

入浴の影響

 入浴事故の最大の誘因は温度変化など物理的環境にあると考えられる。

 温熱作用は、血管拡張による血行促進によって組織への酸素供給を増加させる効果のことで、心臓への負担軽減、心拍出量の増加をもたらす。しかし、高齢者や心機能状態によっては逆効果となる可能性がある。また、この効果は湯温や室温の違いによっても異なってくる。

 脱衣場が寒いところでは血管が収縮するため血液は心臓、脳、消化管などの臓器に偏って分布する。高温浴(およそ42℃以上)の場合、入浴後温熱作用によって末梢の皮膚(体表面)の血流が著しく増加する。

 脳や心臓の動脈硬化があるとこれらの臓器を流れる血流量が急激に減少し虚血状態が生じる。また長く高温で入浴すると、発汗による血液量減少や血液凝固亢進状態を起こし脳梗塞や心筋梗塞の引き金になりうる。

 入浴に伴い血圧の変動も著しい。脱衣場の室温が低い場合は、入浴前にすでに血圧上昇が起こり、高温浴では入浴直後にさらに上昇する。その後血圧は低下し始め、入浴後、およそ4,5分たった頃、収縮期血圧(最高血圧)は入浴前より5-30%低下する。

 入浴時間が長くなったり、湯温が高温となったり、高齢者、高血圧症の人では変化率がさらに著しくなる。浴槽から出るときの立位動作に伴いさらに下降する場合がある。

 これは高齢者に多くみられる「食事後性低血圧」「起立性低血圧」と同じメカニズムで起こると考えられる。溺没、溺水の原因となる「意識障害」「湯のぼせ」「湯あたり」が生じる重要な要因である。

 静止した水中では、大気圧と深さに比例した水圧すなわち静水圧が働いている。下肢は血液を心臓に戻す重要な役割を担っておりこれを下肢ポンプ作用というが、水中で下肢は深いところに位置するので、加わる静水圧によって静脈血が心臓に還流され心拍出量が増加する。

 一方、静水圧によって全身浴では胸囲は1-3cm、腹囲は3-5cm縮小する。胸郭が圧迫され、腹囲が縮小した結果、横隔膜を挙上する。そのため心臓から肺への血流も抑えられるので心臓への負担は増加する。半身浴では、このような負担は少ないと思われる。

入浴中急死のメカニズムと対策

 以上の点を考慮した入浴中急死のメカニズムは次のように考えることができるだろう。

 気温、室温、湯温などの温度や水圧の影響を受けて心・血管反応や発作が起こり、意識障害が現れる。

 その場が浴槽内であれば溺水や溺死事故となり、浴槽から出ていれば転倒、湯あたり事故となるのではないだろうか。

≪入浴事故予防のための対策≫

1. 湯温は39~41℃くらいで長湯をしない

  1. 脱衣場や浴室の室温が低くならない工夫をする

  2. 食事直後や深夜に入浴しない

  3. 気温の低い日は夜早めに入浴する

  4. 心肺の慢性疾患や高血圧症をもつ人では半身浴が望ましい