がん治療の前提は免疫力の維持 Topics

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がんと免疫力

 生体が生存するためには健全な免疫力が必要となる。がん細胞も免疫によってある程度抑制することができるが、抑制できる限界は、1万個くらいまでである。1日に数千個程度のがん細胞ができていると言われているが、その程度であれば免疫力だけで抑えられるであろう。しかしストレスや体調、加齢などにより免疫力が低下した場合、免疫機能が落ちてがん発症の引き金になる。

 すでにがんを発症している人は、基本的に免疫不全の状態にあると考えたほうがいいだろう。これに加えて抗がん剤を多量に投与したり、放射線を大量に放射したりすると、がんと闘っている免疫システムがてきめんに乱れてくる。そのとき血液検査をすれば、リンパ球が劇的に下がっていることがわかるだろう。がんが発症したならば、免疫力を下げないということが絶対的に重要だと考えられる。

 しかし、がんの塊が目に見えるほどの大きさに成長してしまったら、免疫力だけでがんを抑えることは不可能であろう。もし免疫療法でがんを治そうとするのであれば、大きな腫瘍だけは外科手術で除去しなければならない。また放射線や化学療法の活用も検討しなければならないが、問題は現在行われているこれらの治療において、患者さんの免疫力を保つという視点が欠落していることである。

 個人的には患者さんの免疫力を損なわないことを大前提としていわゆる三大療法を行うべきだと考えている。人間という、これほど複雑なネットワークを持つ生命体の細胞の変異体であるがんを抑えるためには、わずかな種類の抗がん剤で対抗しようとしても、効果を上げることは極めて困難なのではないだろうか。

免疫力を高め調和を回復する

 本来、健康という領域の中で生きてきたからだが、エントロピーが蓄積し免疫力が低下することでいつのまにかがんという領域に陥ってしまったということをよく理解したうえで、再び健康という領域に戻るための作業を行うことこそが、真の意味での「がん治療」だと考える。生命体とは、ひとつの大きな「調和した場」であり、病んだ状態とはその調和が乱れているということである。

 この考え方における治療の基本は、乱れた調和をいかに再び健全なものに戻すかということになるだろう。たとえばゲルソン療法やマクロビオティック、漢方やアーユルベーダなど、この考え方による治療は世界中にたくさんある。そして実際にある程度の効果があることが知られている。健康なからだの持つ「調和した場」を再び作るためには、免疫力を高めなければならない。

 調和が乱れることによりがんという症状が浮かび上がってきたのであれば、まず免疫力を高めたうえで、必要な治療を行うべきである。がん患者さんからの血液データからは、自然免疫が活性化していることを示す炎症のシグナルがさかんに発信されていることが分かる。これによって、がんが炎症性サイトカインという物質を出すことで血液中に好中球が増え、さらのサイトカインが分泌されるという一連の循環現象が推測できる。

 このサイクルによって、血中に活性酸素を出す好中球が増え、それと相対的にがんが増殖しやすい体内環境が作られていく。すなわちがん免疫を担当するリンパ球の数が減少する。このように、がん発症に伴って変化する血液の質を観察することで、免疫機能を抑制しようとするがんの意図が浮かび上がってくる。

(「がんとエントロピー」和田洋巳 2015/11/30 NTT出版より引用)