アレルギーと感染症の関係 Topics

ヒノキ
 なぜ、アレルギーに苦しむ人が増えたのか。病原体が引き起こす感染症全体を眺めれば新しい光景が視野に入ってくるかもしれない。太平洋戦争が終わった昭和20年代、私たちの生活環境は清潔とは言い難いものだった。子供たちは、鼻から青バナを垂らしていた。あれは鼻の孔に細菌がいたからだ。身の回りには、いろんな種類の病原菌がいて、私たちは頻繁に病気にかかり苦しんだ。

 だが、その後、日本人は急速に感染症の苦しみから遠ざかった。下水道の普及で衛生状態が向上し、病原菌が生活の場から追放されたからだ。それでも、私たちは時には、病原体に襲われ病気にかかったが、20世紀後半の文明はすばらしい医薬品を発明した。ペニシリンのような抗生物質だ。こうして私たちは、体の中に持っている免疫の力を使わなくても、病原体と対抗できるようになり、日本人の寿命はついに世界最高水準へと到達した。

 ただ、感染症を撃退していった歴史と花粉症などのアレルギーの広がりを重ねたとき、意外な事実に気が付く。感染症の減少と、ちょうど反比例するかのようにアレルギーが日本人に広がっていることだ。両者には、何らかの因果関係があるように見える。

 そこで次のような仮説を考えることができる。環境がきれいになったり、抗生物質が頻繁に使われるようになったりしたことで、免疫は次第に、細菌やウイルスなどの病原体と戦う機会が少なくなっていった。病原体が身の回りにいっぱいいた昔なら、免疫は病原体と戦ってくれるIgGなどの抗体やキラーT細胞などを作り出していただろう。

 だが今や、これらの抗体や細胞には活躍の場がほとんどなくなった。その代わりに働き始めたのが鬼っ子抗体のIgEだったのだろう。この現象は免疫を取り巻く環境が変わった結果、免疫に関連する遺伝子の働きに微妙な変化が現れた、とも解釈できるかもしれない。

(「現代免疫物語」岸本忠三/中嶋彰 2007.4.20初版 講談社ブルーバックスより一部引用)

(関連記事)
「金属アレルギーと手湿疹」

金属アレルギーと「手湿疹」

「ストレスとかゆみ」

ストレスと「かゆみ」