エネルギーは物質化する Topics


 「加速器」という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。加速器とは粒子を加速させる装置であり、素粒子物理学の実験の主要な手段となっている。加速器の中で行われているのは、粒子と粒子を衝突させる実験である。衝突させる粒子は、たとえば「電子」と「陽電子」などだ。

 粒子を光の速度近くまで加速させ、衝突させるのである。光速近くまで加速された粒子は、大きなエネルギーをもっている。その「粒子どうしが衝突した際におきるできごと」が、私たちの日常感覚からすれば実に常識破りで奇妙だ。

 電子と陽電子を衝突させた場合、不思議なことに両者は消えてしまう。不思議なことはこれだけではすまない。電子と陽電子が消えた後、「クォーク」と「反クォーク」、あるいは「ミュー粒子」と「反ミュー粒子」など、もとの電子と陽電子とはまったく別の種類の粒子が新たに誕生するのである。

 これらの新たに誕生した粒子は、もともと衝突前の陽子と陽電子がもっていたエネルギーから生み出されたものだ。これはどう考えても不思議な現象だ。私たちの日常の生活では、たとえばボールとボールがぶつかって消え、まったく別の種類のボールが飛びだしてくるなどということはありえないからだ。

 不思議な現象のカラクリは、素粒子が極微の世界の住人だということにある。現代の物理学によると、極微の世界の空間には、エネルギーから素粒子を生みだす(あるいは素粒子を消し去る)能力がそなわっているのである。

(「Newton 別冊 空っぽの空間は、本当に空っぽか? 無の物理学」2010.7.15 ニュートンプレスより編集引用)

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