タンパク質は貯蔵できない Topics

体調不良の原因は栄養不足なのか

 私たちが、どこか身体の調子が悪い、なぜか疲れが取れない、お肌の調子がおかしい、そんなふうに感じた時に「きっとこれは何らかの栄養素が不足しているからだ」と思うのは幻覚なのであり、サプリメントを欠かさず飲んで、不足がちな栄養素を補うという行為は、栄養障害でもなんでもなく、むしろ強迫的な神経症状に近いと言える。

 栄養所要量は、たとえばカロリーベースならば一日あたり2000キロカロリー、カルシウムなら6000ミリグラム、ビタミンA・・・、という具合に定められている。私は先に「普通の食生活をしている日本人であれば、不足する栄養素は一つとしてない」と記した。しかし、この事実の別の一面にまったく無自覚というわけではない。

 栄養所要量はあくまで「一日あたり」の摂取の目安である。ほとんどの栄養素は程度の差こそあれ貯蔵できる。だから、たとえ多い日、少ない日があったとしても平均してだいたい所要量に見合った摂取が行われている限り、収支は維持される。しかし、貯蔵することのできない栄養素であれば? ここに問題の所在がある。

タンパク質は貯蔵できない

 タンパク質は貯蔵できない。なぜならタンパク質の流れ、すなわち動的平衡こそが「生きている」ということと同義語だからである。タンパク質の合成と分解のサイクルはとどめることができず、この回転を維持するために、外部から常にタンパク質を補給しなければならない。

 成人一日当たりのタンパク質所要量は60グラムだ。だから、私たちは何も毎日、血の滴る何百グラムものプライムリブを常食する必要はもちろんない。しかし、一日に60グラムのタンパク質は、身体の代謝回転を駆動するためにいつも必要とされているのである。

 もし、収支バランスとして一日あたり60グラムのタンパク質が摂取されているとしても、それが極端な形で間歇的にしかとりこまれていないとしたら? つまり、朝は抜いて、昼もコーヒー程度でごまかし、夜になって初めてドカ食いするような食生活を続けているとすれば、この人は、飽食の時代にあって、一日のうち約三分の二は確実にタンパク質飢餓状態に陥っていることになる。

(「動的平衡」福岡伸一 2009/2/17 木楽舎より引用)

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