ヒトストレスの特性 Topics

ライオン

ヒトストレスの特性

 内省的な意識が発達する以前の人間の原始的な状態は周期的に生じる飢え、性欲、苦痛、それに危険によって時折かき乱されるだけの、内的に平穏な状態であったに違いない。

 現在我々をひどく苦しめている心理的エントロピーの諸形態、満たされない願望、挫折した期待、孤独、欲求不満、心配、罪悪感など、はすべて最近になって心に侵入してきたものである。

 それらは極度に増大した大脳皮質の複雑さと、文化に含まれる豊富な象徴の副産物である。それらは意識の出現にともなう暗い側面である。

動物との比較

 動物の生活を人間の目から解釈すれば、何をすべきかについての彼らの知覚は彼らがしようとすることと一致しているのが普通であるから、彼らはほとんど常にフローしているということになる。

 ライオンは空腹を感じるとうなり始め、飢えが満たされるまで獲物を求める。飢えが満たされるとライオンは寝そべって日向ぼっこし、夢を見ながらひたすら眠る。

 ライオンが満たされない野望に悩んだり、責任の重圧に打ちひしがれると考える理由はない。動物の能力は常に具体的な要求と釣り合っている。

 彼らの心には本能によって単純に決定される彼らの身体状態と、関わり合いをもつ環境の中にある情報しか含まれていないからである。

 したがって、飢えたライオンはガゼルを見つけることは何の役に立つかを知覚するだけであり、他方、飽食したライオンは日光の温かみに十分に注意をするのである。

 ライオンの心はその瞬間には必要のない可能性を検討することはなく、他の快楽を想像したり失敗の恐れに心を乱されることもない。

(「フロー体験 喜びの現象学」M.チクセントミハイ 1996/8 世界思想社より引用)

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