ミスマッチ病 Topics

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 進化的ミスマッチ仮説とは、基本的に、遺伝子と環境の相互作用の変化に適応の理論を当てはめたものだ。

 あらゆる世代のあらゆる人は、周囲の環境と相互作用する数千の遺伝子を受け継いでいるが、それらの遺伝子の大半は、何百世代、何千世代、ことによると何百万世代も前に、特定の環境条件のもとで祖先の生存能力と繁殖能力を高めるために選択されたものである。

 したがって、あなたが受け継いでいるそれらの遺伝子のおかげで、あなたは特定の活動や食物や、気候条件や、その他もろもろの環境的な側面にさまざまな程度で適応している。

 しかし同時に、環境の変化によって、あなたはときどき別の活動や食物や気候条件などに対して十分な適応ができていない。この適応不全の反応が、ときどきあなたを病気にかからせる。

 たとえば自然選択は過去数百万年のあいだに、果実、塊茎、野生の鳥獣、種子、木の実など、繊維は豊富だが糖分は少ないさまざまな食物を摂取するように人間の身体を適応させた。

 そのために、現代のあなたが糖分ばかりで繊維の少ない食物を絶えず摂りつづけていると、いつ2型糖尿病や心臓病などの病気が発症しても不思議はないのである。

 ミスマッチ病には多くの種類があるが、いずれも原因は、環境の変化によって身体の機能のしかたが変えられてしまったことにある。ミスマッチ病は刺激が大きすぎること、小さすぎること、新しすぎることのいずれかが原因なのだ。

 たとえば文化的進化が人々の食生活を変えるとともに、ある種のミスマッチ病が脂肪摂取の過多によって起こり、また別のミスマッチ病が脂肪摂取の不足によって起こり、また別のミスマッチ病が、身体の消化できない新種の脂肪(水素添加した硬化油など)を摂取することによって起こるのだ。

(「人体600万年史〈上〉」ダニエル・E・リバーマン 2015.9.25初版 早川書房より引用)