交感神経と血圧調節 Topics

頭痛

交感神経は心臓と血管を支配

 交感神経がターゲットする臓器は、心臓だけではない。第一には心臓なのだが、第二に重要なターゲット臓器としては、血管がある。じつは私たちの血圧は、交感神経が血管を支配していればこそ、日常的に遭遇するどのような環境変化に曝されても、下がりすぎることなく一定のレベルに維持されているのである。

 心臓を収縮させれば血圧も上昇しそうだということは、読者にもなんとなく予想がつくであろう。ところが、ポンプとしての心臓機能が増加しても、じつは血圧上昇への寄与は意外に小さいのである。むしろ血圧とは、血管が収縮する程度、つまり血管がある一定の緊張度を保つように血管の太さ(血管内腔径)を調整することで、維持されているものなのである。

 こうした交感神経による血圧制御は、動作時間が非常に短く、秒単位で進行する。まさにリアルタイムチューニングの名にふさわしいスピードで制御されているのである。

血圧をリアルタイムチューニング

 このような精巧なしくみに異常をきたす疾患の例としては、シャイ‐ドレーガー症候群という脊髄小脳変性症の一病態がある。これは、かなり長い年月を経て自律神経が変性することで、その機能が失われる神経変性疾患である。

 正常なヒトは、体位や姿勢を急に変化させても血圧が大きく変動することはないが、この疾患に罹患すると、たとえば寝ている状態から急に立ち上がっただけで、重力の関係で血液が足の末梢から心臓に戻ってくることが困難となり、静脈血量不足により血圧が急激に低下してしまうのである。

 読者の方々も小学生や中学生のころ、朝礼の途中で意識を失ったり、気分がわるくなってしゃがみこんだり倒れてしまったりした経験があるかもしれない。あるいは周囲にそういう生徒がいたかもしれない。

 それらは起立性調節障害という部類の、自律神経機能の未発達によって起るものがほとんどであり、この疾患とは大きく異なるが、交感神経の機能が失われると、これと似た症状を日常的にきたしてしまうのである。

 このことを想像すると、姿勢が変化するたびに作動する交感神経のリアルタイムチューニングが私たちにとっていかに重要なものか、ご理解いただけるのではないだろうか。

(「心臓の力」柿沼 由彦 2015/8/21 講談社より編集引用)

(関連書籍・記事)
「立位による起立性低血圧症」

立位による起立性低血圧症