動物の自己治療 Topics

オラウータン

ストレス反応とは

 ストレスは嫌悪をもよおす状況に反応しておこる生理的変化である。直接の反応は、闘争や闘いにそなえて体がエネルギーを結集することである。成長や免疫などの長期的建設・修復計画は、非常事態が過ぎ去るまでおあづけになる。

 痛みは一時的に鈍り、記憶は研ぎ澄まされる。糖質コルチコイド・ホルモンが増え、動物はぴりぴりして実践にそなえるが、繁殖や摂食などそのほかの行動には集中できない。

 これは短期的な非常事態に対処するには有効だが、ストレス反応が長引くと有害である。消耗が進み、免疫システムが抑制されるため感染症にかかりやすくなる。このため、精神状態はできるだけ早くもとにもどす必要がある。

動物のストレス軽減方法

 動物が不安感を軽減する一つの方法は自分の体をグルーミングし、抱え込み、撫でることである。野生動物も家畜も、肉体的ストレスや精神的ストレスにさらされると、食べることをさておいて自己グルーミングに走る。

 ヒヒの社会は暴力的で緊張にみちている。けんかは日常茶飯事で、重傷を負うこともよくある。このような攻撃的な社会での暮らしから興味深い対処法がうまれた。

 けんかをした2頭はそのあとすぐに自分の体を掻き、グルーミングし、体を揺すり、あくびをして緊張をとく。それでもだめだと、ある種の仲直りをもとめることが多い。

 その後はこのような自慰的な行動をとる必要がなくなる。たいていの霊長類は戦いのあと和解しようとする。少なくとも、闘いが終わったことを確認しようとする。

 自分より強い仲間がそばにいると、ひじょうに不安になることがある。順位の高い雌のヒヒが5メートル以内にいると、順位の低い雌はその雌が立ち去るまで、体を揺すり、グルーミングし、自分の体に触れ、あくびをする。

 この行動は正確にあらわれるので、不安の程度を測るものさしになり、とおりかかった個体の地位を読むことさえできる。私たちが、部屋にはいってくる人の地位を、居合わせた人たちの反応から推しはかれるようなものである。

「手当て」と生存的有利(環境適応力)

 ストレスホルモンのレベルを測定しておこなった実験では、このような自慰的行動は鎮痛効果がひじょうに高いことがわかる。順位の高いガラコが順位の低いガラコに近づいてそばにすわると、順位の低い個体の血中コーチゾン濃度があがる。

 このことから、順位の低い個体にとってこの状況が非常にストレスの大きいものであることがわかる。不安なガラコは自己グルーミングをはじめ、とくに肢と胸を撫でる。

 この行動とストレスホルモン・レベルの低下が一致する。さらに、胸と肢を撫でる個体はそうでない個体より新しい環境のストレスに強い。

(「動物たちの自然健康法」シンディ・エンジェル 2003/10 紀伊國屋書店より引用)

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