匂いの記憶 Topics

バラ

匂いの記憶

 匂いほど記憶にとどまるものはない。幼少時代の家や友人を誰かに思い出してもらってみるといい。たいがい細かい部分のディテールは怪しくなっているはずだ。

ところが、なじみのある光景の匂いをほんのわずか、嗅がせてあげれば記憶は怒涛のように蘇ってくる。しかも、部分ごとに徐々に戻ってくるのでなく、全体がまるごと、もとの体験の味わい全体が奇跡のようにそのままもどってくる。

嗅覚について

 匂いというのは化学的な感覚だ。鼻の受容体細胞の仕事は、化学的な情報を電気信号に変換することだ。電気信号は嗅神経に沿って頭蓋腔に流れこみ、嗅球に集まる。

それが今度は大脳皮質に伝わって、そこで結びつけの作業が行われ、名前のない信号が、大好きなバラの香りに変換されたり、憎たらしいスカンクの警告臭と同定されたりするわけだ。

※嗅覚・・嗅覚以外の4つの感覚(視覚・聴覚・味覚・皮膚感覚)は、脳の大脳皮質までに視床を経由するが、嗅覚の情報だけは視床を経由せず大脳皮質や扁桃体に直接届く(=香りの刺激は直接大脳に届く)

匂いの記憶は進化上の防衛システム

 匂いの記憶は生命にとって欠かすことのできない原始的な防衛システムをなす。そのおかげで人は、あることを一回わずかに経験しただけで、それが有毒であって、永遠に避けるべきものであることを学べるのだ。

親族を認識したり、食料を見つけたり、獲物を追跡したり、周囲の人たちの生殖状態を確認しておいたりすることができるのもこのおかげだ。このシステムは非常に適応性が高く、先祖伝来の目的を持っているため、進化上においても非常に大きな意味をもつ。

(「匂いの記憶」ライアル・ワトソン 2000/11 光文社より抜粋引用)

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