心拍のゆらぎと外部刺激(環境)の関係 Topics


 心拍がそれほど規則的なリズムでないことは、日常経験からも明らかです。はらはらどきどきすればもちろんですか、安静にしていても心拍は揺らぎます。ペースメーカー集団のマクロリズムがこのように一定しないのは、この集団が本来不正確なリズムしか生み出せないからではありません。

 そうではなく、集団全体が外部から受ける影響が不規則に揺らいでいるからです。実際、心臓は自律神経の強い影響を受けています。自律神経とは、運動神経や感覚神経とは別に自動的に体の機能を調整してくれる神経のことですが、とりわけペースメーカー集団には自律神経からの豊富な入力があります。

 自律神経には交感神経と副交感神経があり、それぞれは固有の神経伝達物質を放出することで、それぞれアクセルとブレーキの役割を果たしています。交感神経はノルアドレナリンを放出して、心拍数をあげます。アポロ11号で月面着陸した宇宙飛行士のアームストロング船長は、月面着陸時には脈拍が一時150を超えていたそうです。

 一方、副交感神経はアセチルコリンを放出することで、心拍数を抑えます。肉体運動の激しさや心の状態を体はすばやくキャッチし、状況に応じて心拍数を変えることで血流を変化させ、必要に応えているわけです。このように、心拍は決して規則的ではありません。

 しかし、もしもペースメーカー集団が外部からいっさい影響を受けないとしたら、その集団リズムは安定した正確なものであるに違いありません。もしそうでなく、気まぐれにリズムを変動させているのだったら、神経やホルモンの刺激の強さに応じて正確に拍動のペースを変えるという重要な機能が果たせなくなるでしょう。

(「非線系科学 同期する世界」蔵本由紀 2014.5.12 集英社新書より引用)

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