細胞内のエネルギー産生の仕組み Topics

「人が病気になるたった2つの原因」P29

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解糖系とミトコンドリア系

 私たちの体は、食べ物の栄養素や呼吸から得た酸素を細胞まで運び、活動エネルギーに変えることで生き続けています。人が呼吸し、食事をするのは、全身の60兆もの細胞にエネルギーの原料を送りこむためであり、こうした燃料をもとにした細胞内のエネルギー産生が生命活動の基礎になっているのです。

 そして、エネルギーの産生システムは、「解糖系」と「ミトコンドリア系」という2つのプロセスにわけることができます。わかりあやすくいえば、人間には細胞内に、性質の異なる2つのエネルギー工場があるのです。まず、解糖系についてですが、これは食べ物から得られる栄養素をエネルギーに変換するシステムです。

 原料になるのは主にブドウ糖(糖質)です。ただ、即効性がある分、一度に作り出せる量は決して多くありません。これに対してミトコンドリア系は、解糖系で分解された栄養素の加え、呼吸によって得られた酸素など、ほかの多くの要素も関わっています。

 細胞内のミトコンドリアという期間で栄養素を取り出し、酸素と結びつけ、水を作り出す過程で、解糖系とは比較にならない多量のエネルギーを生み出すことができます。生物はこうしたミトコンドリア系の膨大なエネルギーを獲得することで進化の切符を手に入れたわけですが、行程がとても複雑なため、瞬時にエネルギーが必要なときには、シンプルな解糖系が必要になります。

解糖系=無酸素運動・ミトコンドリア系=有酸素運動

 解糖系とミトコンドリア系のエネルギー産生は、専門的には、嫌気性(酸素を嫌う)と好気性(酸素を好む)と呼ばれています。私たちの体は細胞内の2つのシステムを使い分けることで、外界の様々な環境に適応して生きているのです。

 たとえば、瞬時にエネルギーが生み出せる解糖系=無酸素運動は、短距離走のように素早い動作を行うときに必要になります。実際に試してみるとわかりますが、人は全速力で走るとき、息を止めて無酸素状態になっています。

 そうでなけれは全力疾走はできません。素早い動作というのは、すべてが嫌気性の無酸素運動なのです。もちろん、無酸素の世界は長続きできるものではありません。

 全速力で走るとすぐに疲れ、動きが止まってしまいますが、それはブドウ糖が分解される過程で疲労物質である乳酸などが作られるからです。そのため持続力が必要になるときには、解糖系からミトコンドリア系のエネルギーに切り替わります。

 マラソン選手のように長時間にわたって運動が持続できる人は、ミトコンドリア系をうまく活用しているのです。

(「人が病気になるたった2つの原因」安保徹 2010.7.28発行 講談社より一部引用)

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