脳の可塑性とはなにか Topics

脳
 その大学生は数学で賞を取り、IQ(知能指数)が126で、全く普通の社会生活を送っていたが、実は、大脳皮質がほとんどないことが、CTスキャンで発見されたのである。

 その原因は、子供の頃、水頭症という脳室に脳脊髄液がたまる病気になったためだった。大脳皮質が圧迫で紙のように薄くなったのであるが、にもかかわらず、数学で賞をとったことは驚嘆に値する。「サイエンス」誌のつけたこの記事の標題も、「あなたの大脳は本当に必要か」という、衝撃的なものであった。

 もちろん、大人が突然このような状態になればとても生きてはおれない。しかし子供の時から少じずつ大脳皮質が欠けていった結果、このような状態になれば、大脳皮質以外の脳や小脳などが欠けた大脳皮質の機能を代行するようになるということを、この例は示している。

 いいかえれば、脳には、驚くべき柔軟さがあって、大きな部分がごっそり脱落してしまっても、残った部分が新しい機能を獲得するという性質がある。

(「脳の可塑性と記憶」塚原仲晃 2010/5/15 岩波現代文庫より一部引用)