進化の過程から見た「行動依存」 Topics

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進化の過程から見た「行動依存」

 人の行動依存症を、進化のプロセスから検討すると、そうした行動は個人の適応度(動物のサバイバルのチャンス)を非常に高めるものだとわかる。セックス、過食、運動、労働。「自然界で」生きていくとき、あるいは自然淘汰によってふるい分けられるときに、これらの行動はかなり行き過ぎたものになったとしても、否定的な面をたくさん引き起こすとは、とうてい想像できない。

 ギャンブルや強迫的ショッピング(これらはヒトのバージョンの行動であるが)、動物の生存に極めて有益なふたつの活動、すなわち、えさあさりと狩り行動が関わるところと同じ神経回路を活性化するのだ。資源の獲得とはおもに食べ物を探すことになるが、食べ物に加えて、ときには隠れ場所や巣づくりの材料などを得るという特別の目的のために、動物は集中し調整しながら努力し、エネルギーを費やす。神経伝達物質の報酬は、生存にプラスになるこうした行動を強化する。

 神経生物学の研究結果をたどると、ギャンブルはえさあさりの極端な形なのがわかる。ギャンブルでは、食べ物が金銭の見返りに代わっている。もちろん、食べ物やお金はたしかにそれ自体で報酬ではあるが、ここでの本当の意味での見返り、依存症を起こす部分は、探索やリスクを冒すことであふれでる種々の神経伝達物質なのだ。外部の化学物質がやってのけるのと同じように、行動することによって、依存性の高い報酬が生み出されるのである。

スマートフォン依存と脳内化学物質(報酬系)

 そして、脳内に報酬物質を放出する行動と適応度アップの図式が確信できるようになると、テレビ・Eメール・ソーシャルネットワーキングなどのハイテク機器依存症についても、わたしは見方を変えられるようになった。スマートフォン中毒になっていると冗談を飛ばす企業幹部は、端末をさわりたくてたまらない親指のうずきを鎮めるために、自分が禁酒会による12ステップの回復プログラムを受けるべきだとは考えてもいないだろう。

 とはいうものの、わたしたちの多くは、端末の小さい画面をチェックしたくなる衝動に駆られてしまう。たとえ重要な会議中でも、運転中でも、その誘惑に負けそうになる。スマートフォン、フェイスブックのページ、ツイッターなどでの発信活動の根底には、動物が生き残りをかけて競うための最も重要なファクターが組み合わさっている。つまり、社会的ネットワークの構築、パートナーの獲得、捕食者の脅威に関する情報収集の要素がつまっているのだ。

しかし、そうしたハイテク機器はドラッグと同じように、実際に仕事をしなくても(成果をあげなくても)、報酬を与えてくれる。具体的な資源を見つけようとしなくても、脳内にドーパミンが放出される。同じ群れの仲間と実際につきあう面倒なしに、ひとつのグループの一員であるかのように感じ、オピオイド(アヘン類縁物質)のとろけるような流れに身をゆだねられるのだ。

(「人間と動物の病気を一緒にみる」バーバラ・N・ホロウイッツ 2014/1/16 インターシフトより引用)

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