運動の疲労は脳(自律神経)の疲労 Topics


 ヒトは、運動を始めると、数秒後には心拍数が上がり、呼吸が速く大きくなります。また、体温の上昇を抑えるために発汗します。それを秒単位で制御しているのが「脳の自律神経の中枢」と呼ばれる視床下部や前帯状回なのです。運動が激しくなると、この「脳の自律神経の中枢」での処理が増加します。

 その結果、脳の細胞で活性酸素が発生し、酸化ストレスの状態にさらされることでさびつき、本来の自律神経の機能が果たせなくなります。これが脳で「疲労」が生じている状態、つまり「脳疲労」です。

 では、運動時にもっとも疲れるのはどこか。その答えは、実は脳そのものにあったのです。たとえば1時間程度のジョギングをした際の疲労について考えてみましょう。ジョギングは下肢だけでなく上肢を含めた全体で筋肉を使います。しかし、筋肉は何Kgもある丈夫なもの。ジョギング程度では筋肉自体を傷めることはありません。

 しかし、ジョギング中、筋肉以上に1秒たりとも休むことなく働き続けているものがあります。そう、呼吸と心拍です。ご存じのように呼吸は横隔膜や肋間筋などの呼吸筋、心臓は心筋によって働きますが、それぞれ勝手に動いているわけではありません。

 呼吸と心拍は、決して一定ではなく運動強度や体調に応じて、体が求める酸素必要度を秒単位で計算し、呼吸・心拍の速度や大きさを調節しています。人が、ひとたびこの調節を怠ると間違いなく数分以内に死んでしまうことでしょう。

 その調節を司っているのが、脳のなかにある「自律神経の中枢」(視床下部、前帯状回)と呼ばれる部位なのです。「自律神経の中枢」では、体が正常に安定した状態を保つために、24時間、休むことなく秒単位で心臓や横隔膜などあらゆる器官や組織に指令を出し続けています。

 また、体温に関しても体の状態と外界の変化に合わせて発汗などで調節しています。とくに、ジョギング中は速度や傾斜などによって体にかかる負荷も秒単位で刻々と変化することから、「自律神経の中枢」もフル回転で心拍、呼吸、体温を調節しなければなりません。

 体にかかる負荷が大きければ大きいほど司令塔である「自律神経の中枢」への負担も増加します。この「自律神経の中枢」の疲労こそが運動疲労の正体なのです。

(「すべての疲労は脳が原因」梶本 修身 2016.4.20 集英社新書より編集引用)

(関連書籍・記事)

「心拍変動(HRV)の臨床的意義とは」

心拍変動(HRV)の臨床的意義とは