風邪の始まりを認識する Topics

風邪 マスク

風邪とは

 風邪とは、主にウイルス感染によって引き起こされる上気道の炎症をいいます。空気中に浮遊していたウイルスや菌が、空気の通り道である上気道に付着し、繁殖して炎症を起こすのが風邪の始まり。

 ウイルスは気道の中でもまず最初に、鼻やノドの奥の、うがいの届かない気道の上の部分(上気道)に付着します。それは、ウイルスが上気道の細胞が大好物で、しかもこの細胞に入り込むための合鍵をもっているからです。

 細胞に入り込んだウイルスは細胞の中の栄養分を材料にどんどん子供を大量生産、細胞を破壊すると、また別のところで不法侵入を繰り返します。

風邪の合併症

 風邪が上気道から下気道に移っていくと、声が嗄れてきます。気管の入り口に声帯があるためです。またタンやセキを伴うようになります。これが気管支炎と言われるもので、程度はいろいろながら代表的な風邪の合併症です。

 それともう一つ、重要な合併症があります。副鼻腔炎です。副鼻腔炎とは、鼻の周りにある骨空洞のことで、いわば顔全体を軽く丈夫な構造にするとともに下垂体などをクリーンにするための空間。

 この副鼻腔に炎症が起こると、鼻声や鼻づまりになったり、膿のような黄色い鼻汁が大量に出ます。これは風邪がリンパ球の炎症から、膿を作る顆粒球の炎症に移ったことの現れです。

 強い痛みを伴うことはありませんが、鼻汁や鼻づまりの症状が強くなります。さらに慢性化すると、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)といわれる症状になって治りづらくなります。これらは多くの人がかかる合併症であり、不快な症状が続くことになります。

風邪のこわさ

 きちんと治しておかないと、つぎに挙げるような重い合併症に移っていくことがあります。その筆頭が慢性気管支炎です。セキが長引いて、夜中のセキがなかなか止まらなくなります。

 セキ止め薬必要となります。立て続けにセキをしていると、セキそのものが気管をますます傷つけてしまい、ついには気管の防衛能力の限界に立ち至ります。それが究極に達すると喘息に移行していくことになります。

 また慢性気管支炎と慢性副鼻腔炎は、どちらであっても長引くと双方が合併して、副鼻腔気管支炎症候群になることがあります。この病気になると常に鼻づまりに悩まされますし、やがて喘息や肺炎など呼吸器を中心とした合併症へ移行していく可能性が大きくなります。

風邪は夜中に進行する

 風邪の諸症状で私が苦手なのはノドの痛みですが、軽い場合は上気道にウイルスがくっついて炎症を起こすだけで終わります。けれど鼻の一番奥とノドの境目にある「Bスポット」という場所でウイルスが大繁殖すると大変です。

 この部分には咽頭扁桃という名のリンパ組織が存在していますから、この近辺にウイルスが付着して増殖すると、とくに睡眠中にリンパ球が強力に応戦し、結果、痛みや腫れや発赤を引き起こすのです。

 また鼻づまりも夜中に進行します。鼻水、鼻づまりはともに風邪の初期症状としての現れです。リンパ球が上気道のウイルスに付着している場所に大量に集められると、炎症を起こして体を守ろうとします。

 それはリンパ球は、すぐには直接ウイルスとは闘えないためです。その代わりにサイトカインを放出して、中枢神経系にプロスタグランジンの分泌促進を促し、発熱させるのです。

 また局所の細胞に働きかけてヒスタミンなどの分泌を促します。その結果、組織透過性が高まって、腫れの症状が出るとともに痛み出します。鼻の粘膜細胞にヒスタミンが作用すれば、粘液の分泌が高まり鼻づまりとなります。こうして夜中に鼻づまりの症状が進んでいきます。

 逆に鼻水は朝起きたときから始まり、風邪の初期2~3日ほど続きます。このようにどれをとっても睡眠時、リンパ球の活動が活発になると同時に、諸症状を引き起こしていることが分かるでしょう。

 これまで「風邪はたっぷり寝て治そう」と信じ実行してきたのが、仇になっていたとは。もちろん健康上、充分な睡眠が大切なのは言うまでもありませんが、こと風邪に関しては、夜、寝ている間こそ風邪が進行する環境になっているのです。

望ましい風邪の経過とは

 風邪ウイルスが上気道に飛び込んできても細胞内に入り込まなければ、風邪はひきません。また細胞内にウイルスが侵入し、増殖を開始した場合でも風邪の症状が起きなかったり、起きても軽く済む場合があります。

 これを不顕性感染といいます。感染ウイルスのパワーより体の免疫力が勝っていた結果です。不顕性感染はもっとも好ましい、風邪の経過でもあります。不快な症状が少なくて、そのときの風邪の免疫(抗体)ができるからです。

 このように体に免疫があったり、上気道だけで症状が終われば、風邪は軽い症状で済みますが、爆発的に繁殖すると下気道、そして喉頭、気管へと風邪症状が進行し、タンやセキでつらい日々を送ることになります。

嚥下の効用

「手洗い・うがい」は、残念ながらほとんど効果は発揮しません。特に手洗いについては、国民を愚弄した予防法だと私は思っています。両方とも日常生活の生活習慣ですから、外から帰ったときや食事の前に衛生観念と思ってやれば事足りることです。

 しかし寒いときの手洗いのやりすぎが、皮膚を守っている皮脂が失われる結果に。手荒れを招き、黄色ブドウ球菌などの悪玉菌感染を助長することが分かっています。

 うがいも、あまり効き目は期待できません。そもそもウイルスが付着するノドの奥に、うがい液が届かないからです。ただし、うがい液がノドの入り口付近に到着すると、うがいに引き続いて「嚥下」という運動が必ず起こり、ノドの奥へうがい液の残りが唾液とともに飲み込まれます。こちらのほうは効果があります。

 嚥下とは、水や唾液、食べ物を飲み込むときに起こる運動のこと。水を飲んだり、何か食べたとき、ゴックンと飲み込みます。このゴックンが「嚥下」です。しかし、いまの「うがい」はガラガラした後に、全部吐き出してしまいます。

 薬液はまずくて飲み込めたものではないですが、これが風邪予防には大きな欠点なのです。もちろん、ノドがすっきりして気持ちよくなりますから、やることは大いに結構ですが。

 ガラガラとうがいした後に飲み込めば、嚥下の際に起こるエネルギーがノドを中心とする上気道全体に波及します。すると熱エネルギーに変換され、局所の免疫力をグンとアップさせます。

 嚥下というのは、食べ物や飲んだものを一挙に食道に送り込む動作ですから、各種白血球も必要としません。ただの唾液や食べ物が主役です。これが上気道に張りついたウイルスも流してくれるのです。流されたウイルスは強力な胃酸で消化されてしまいます。

(「ぬれマスク先生の免疫革命」臼田 篤伸 2007/11/1 ポプラ社より編集引用)

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