LDLコレステロール Topics

(「100歳まで長生きできるコレステロール革命」より引用)

(「100歳まで長生きできるコレステロール革命」より引用)

「悪者説」の由来

 なぜ、LDLコレステロールが「悪玉」にされてしまったのか。その理由をお話ししましょう。一言でいえば、「動脈硬化の犯人」にされてしまったからです。アメリカの死亡原因のトップは心筋梗塞なのですが、この病気は心臓の血管の動脈硬化によって引き起こされると考えられていました。

 そこで動脈硬化を起こした血管を調べたところ、血管内にLDLコレステロールが見つかりました。(ただし、最近の研究で、わずか1%にすぎないことがわかっています)。それにより、誰もが「LDLコレステロールこそ、動脈硬化の犯人だ」と思い込んでしまったのです。

 そして、「あいつこそが悪さを働くコレステロールだったんだ」という話になって、「心筋梗塞を防ぐには、悪玉であるLDLコレステロールを減らすほうがいい」という方向に流れて行ってしまったわけです。

動脈硬化の「真犯人」

 ところが、近年の研究で「別の犯人」の存在が判明したのです。その真犯人が「血管の炎症」。動脈硬化を起こす本当の原因は血管の炎症であり、LDLコレステロールは、その炎症を修復する目的で細胞膜の材料をを届けに集まっていたにすぎないということがわかったのです。

 かいつまんで説明しましょう。血管に炎症が発生すると、すかさずLDLコレステロールが駆けつけて、炎症壁の傷ついた部分を修復します。これですめば問題ないのですが、炎症が持続的に起こっていると、修復が繰り返されて、その部分がカサブタのように盛り上がってきます。

 これが「プラーク」と呼ばれる塊。この塊が大きくなると、心筋梗塞や脳梗塞の危険がグッと高まるのです。すなわち、プラークそのものが血液の流れを防いだり、プラークが破裂して血液が凝固してしまったり、破裂した内容物が流れていって細い血管でつまったりというもろもろの緊急事態が起こることになるわけです(もっとも、最近はプラークと動脈硬化の因果関係はもちろん、動脈硬化と心筋梗塞の因果関係をも疑問視する研究が出てきて、心筋梗塞の真の原因は血液凝固と考えられるようになりました)。

LDLコレステロールの役割

 とにかく、この動脈硬化のプロセスにおいて、LDLコレステロールは、別の悪さをはたらいているわけでも何でもなく、「細胞膜の修復」という自分の役割を忠実に果たしているだけです。

 たとえば、火事の現場に消防車があつまってきた場面を思い浮かべてみてください。火事が血管の炎症の原因だとすれば、それを消しにやってきた消防車がLDLコレステロールです。言ってみれば、せっかく火を消しに駆けつけてきたというのに「たくさん集まっているから火事の原因だ」と勘違いされ、濡れぎぬを着せられてしまってことになります。

血管炎症の原因

  ちなみに、「本当の火事の原因=血管の炎症」がどうして起こるのかというと、いまのところ、喫煙、トランス脂肪酸、高血糖、極度の肥満(BMI35kg/㎡以上)、ストレス、老化、などが要因として挙げられています。こうした要因から起こる血管の炎症がなければ、プラークはできないし、心筋梗塞や脳梗塞にもならないことになります。

 すなわち、心筋梗塞や脳梗塞の真の原因は血管の炎症であって、コレステロールは、基本的に無関係なのです。むしろ、血管の炎症があるときに、無理にLDLコレステロールを下げてしまうと、細胞膜修復などの身体の修復機能が働かなくなってしまうことになります。

(「100歳まで長生きできるコレステロール革命」大櫛 陽一 2012.1.20初版 長岡書店より引用)

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